“夢見る学都”アザリ
――死は夢に変わり、君は終わりなき四季を生きる。
砂漠のただなか、始まりも終わりもなく廻り続ける円形の水路に囲まれた都市国家、アザリ。
“夢見る学都”の異名に相応しく、サラービア地方きっての学術都市です。
魔動機術を始めとして、医学、史学、文学など様々な分野に渡る研究が行われており、また、教育費用は基本的に無償となっています。
研究機関を兼ねた10のカレッジが並ぶ中でも、この都市に特異と言えるのは“セントラルスクール”の存在でしょう。
ここは基礎教育から高等教育までを、生徒の適性や進度に合わせて実施することで知られています。カレッジへの入学は「セントラルスクールの卒業」ないしは「卒業相当」と認められることが必須です。
このセントラルスクールは他の都市で言う「冒険者ギルド」や「ライダーギルド」などのあらゆる機能を兼ね備えています。
この都の中央には〈タイタン・クリスタル〉と呼ばれる、高さ50m、直径10mはあろうかという巨大な透き通った宝石が煌めいています。
この破壊不能な宝石は、アザリの都が生まれた起源に深く関わっているとされています。残念ながらその部分の伝承には異説も数多く、歴史的事実として確認できたものはないそうです。
政治形態はカレッジの各代表10人と、セントラルスクールの代表3人による合議制となっています。
極めて平和な都ではありますが、外部から「異形の侵入者」が現れることがあります。
これがほぼ唯一の外的な脅威となっており、セントラルスクールを通じて討伐依頼を受けた者(外部で言う「冒険者」に相当します)がその対処に当たることが主です。
⚠“夢見る学都”アザリの重大な秘密が以下の項目に記載されています⚠
魔に呑まれし都アザリ
――“夢見る学都”アザリ。
その正体は巨大な砂嵐の中に佇む“奈落の魔域(シャロウアビス)”に取り込まれた、命のない町です。
砂嵐と“奈落の魔域”は共に〈大破局(ディアボリック・トライアンフ)〉の際に発生したもので、アザリの都を呑み込み、総計五万いたと言われる一般市民及び兵士を一瞬にして死に至らしめました。
住民たちは自分たちが死んだことに気付かず、魔動機文明時代が終わり、現代という時代を生きているという「ぼんやりした自覚」だけを持っています。彼らにとっては、自分たちが生きたはずの魔動機文明時代すらも、「遠い歴史の過去」となっているのです。
“異形の侵入者”の正体
かつて学都アザリを飲み込んだ超巨大魔域を討伐するため、数えきれないほどの冒険者が動員されてきました。
アザリの中では、魔動機文明時代の終わりのままで止まった時間が流れ続けています。
死者であるアザリの住人には、そういった冒険者たちは「恐ろしい異形の魔物」として認識されています。
今までに魔域に侵入した者の九割以上が、アザリの住人によって殺害されています。
また、アザリの住人に殺される前に魔域を脱出できても、一人残らず廃人となっています。彼らは如何なる魔法でも癒せないまま、食事も睡眠もまともに取れなくなり、やがて死に至ります。