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ベラフェント駅区ファイラーニ森林公園派出所〈陽気な幽霊亭〉

 キングスフォール南西部、カイミット漁港から潮騒が時折風に乗って聞こえる、ファイラーニ森林公園の一隅にその建物は存在します。
 がっしりとした分厚い鉄筋コンクリート造りで作られていますが、その表面はほぼ完全に蔦などの植物に覆われた緑の外観で、森と半ば一体化しているように見えます。
 遺棄された廃墟のようにも見えますが、人の出入りが多く、夜には明かりが灯ることから、決してそうではないことが分かります。

 鉄筋コンクリートの製法が再発見されて間もない頃に作られた建物ですが、持ち主であった商会が間もなく破産、その後十年ほどに渡って無人のまま放置されてきました。
 その後、キングスフォールのライダーギルド支部が、幻獣・動物の騎獣の繁殖と育成調教の為にファイラーニ森林公園を利用することを計画しました。その事務所として白羽の矢が立ったのが、この建物だったのです。
 しかし、ライダーギルドから派遣された“じゃじゃ馬使い”ジャック・ロシュフォールがこの建物を調べた時、驚くべきものを発見します。
 それは、死んだとされていたはずの〈始まりの剣〉級冒険者、メリーメリー・ウィロウ。何故か両足を失った彼女が、仲良くなった野良犬たちと共に住み着いていたのです。

 今も尚拡大を続けるファイラーニ森林公園。ライダーギルドの目的に際して発生しうるトラブルや、人の住む領域と接するこの広大な森で起こる様々な事件に対処するという目的もあり、冒険者ギルド支部〈いてまえ戦車亭〉の派出所という形で、〈陽気な幽霊亭〉が生まれました。
 そのマスターとなったのは観察眼と見識、コミュニケーション能力を買われたメリーメリー・ウィロウでしたが、グラスランナーである彼女はむらっけがある為、ジャック・ロシュフォールが業務のかなりの所を補佐しています。

 当初から少々おかしな成り行きで出来た〈陽気な幽霊亭〉ですが、その後も珍妙な事件は起こり続けます。
 グロッソ港の名店を飛び出してきた料理人“千本包丁”ベルガモット・コランダムによってただの併設食堂がちょっとしたレストラン級にまで評判が上がったり。
 近隣駅区の教育の低迷に懸念を抱いていた地元議員から、ここで塾を開いて欲しいと頼まれ、子ども向けの学習塾が開かれることになったり。

 ライダーギルドの『牧場』の事務所にして、ファイラーニ森林公園の監視事務所(フォレストレンジャー)を兼ねた派出所にして、その他諸々の機能を兼ね合わせた、ごちゃまぜの『お化け屋敷』、〈陽気な幽霊亭〉には今日も事件が絶えません。
 都市の中心部から離れていることもあって、上層部の依頼はほとんど舞い込みませんが、土地柄、閑静とは程遠い賑やかな日常が待っているでしょう。

ベラフェント駅区ファイラーニ森林公園派出所〈陽気な幽霊亭〉

リンデンファーム

 キングスフォール郊外にある、優れた生物騎獣の生産と調教で名高い大牧場です。
 〈陽気な幽霊亭〉からは、ファイラーニ森林公園を突っ切れば徒歩一時間ほどで辿り着くとされていますが、そんな危険なことをする者は滅多にいません。
 騎獣の運動量を増やす為の夜間放牧や、危険なファイラーニ森林公園深部での遠駆け訓練など、厳しい育成調教を行うことで知られており、それを耐え抜いた少数の個体は、特別なライセンスを得た騎手にしかレンタル・販売されません。その反面、一度送り出した騎獣のメンテナンスも非常に丁寧に行っています。
 “じゃじゃ馬使い”ジャック・ロシュフォールは元々ここの調教師でした。牧場のオーナー、エルメスが老齢の為、その代わりに今回のライダーギルドの『ファイラーニ森林公園利用計画』に携わることになったのです。
 派出所で利用できるライダーギルドの騎獣は基本的に、リンデンファームから委託された通常の騎獣であることがほとんどです。特別な訓練を受けた精鋭の騎獣もレンタル・購入することが出来ますが、並みの冒険者にはメンテナンス費用や、ライセンス更新のテストの難度もあり、到底手が届くものではないでしょう。

リンデンファーム

“おまけの所長”メリーメリー・ウィロウ

名前【“おまけの所長”メリーメリー・ウィロウ/Merry-Merry Willow】
種族【グラスランナー】性別【女】年齢【?】区分【③】
「ボクは死んだのと一緒だからさ、あんま偉そうにも出来ないんだよね。ま、ジャックとベルがうまくやってくれてるし?責任の所在ってやつはいつの時代も必要なんだろ、いいよ、“おまけの所長”ってやつもやってみればあんがいおもしろそうじゃん?」
「へっへっへっ……ちょうどいいところにきたね、キミ。この薬、試してくれないかい?髪の色が輝くようなピンクに染まるはずなんだ」
「人生はシチューみたいなもんさ。色んな具と出汁が混じり合って、他にはない味になる。入れる野菜一つ、ハーブ一つ変えるだけでこんなに違うんだからね」
解説
【若い頃にへまをして両足をなくしたという、〈始まりの剣〉級の冒険者にして派出所の所長です。この派出所に集う多くの者と同様、過去の話はほとんどしません。
 彼女が発見されて以降、魔法により足を再生することが何度か試みられましたが、その全てが失敗しています。何らかの『呪い』のようなものを受けた結果のようですが、本人は『自業自得だし、これもまた人生の経験値だよ』等と言って軽く流しています。
 有能な野伏にして薬剤師でもあり、不自由な体ながらちょくちょくファイラーニの森に向かっては、何日も戻ってこないことがあります。
 元・野良犬だった犬たちの群れにいつも囲まれており、彼らに介助される様は、まるでメリーメリーと彼らが言葉を介さずとも完璧に通じ合っているかのようにも見えます。
 気まぐれな性質ですが、穏やかな人柄で聞き上手であり、時に的確なアドバイスを(気が向けば自分の昔話を交えながら)くれることもあります。
 堅苦しい場を苦手としており、彼女からの依頼は、立場上避けられないそういった付き合いの代行であることが多いでしょう。】

“おまけの所長”メリーメリー・ウィロウ

“じゃじゃ馬使い”ジャック・ロシュフォール

名前【“じゃじゃ馬使い”ジャック・ロシュフォール/Jacques Rochefort】
種族【ルーンフォーク】性別【男】年齢【30】区分【③】
「ただの『動物好き』が俺は好かなくてね。こういう仕事を続けられる者には、二種類いる。一つは騎獣を使い潰しのリソースとしてのみ見る者。もう一つは、自分が預かった『命』を傲慢にも利用していることへの『覚悟』を持っている者だ。さて、君はそのどっちかになるだろうか。それとも――やめてしまうだろうか?」
「おかしいな、俺は出向して来たはずだったんだが……」
「すまない、君。メリーメリーを探してきてくれないか?ベルによれば、ついさっきまで食堂でケーキをつついていたはずなんだ」
解説
【ライダーギルドから派遣されてきた人物です。騎手、同業者、一般人、騎獣を含めた全てに対して厳しい態度を取ります。
 元はライダーギルドからリンデンファームに出向して筆頭調教師の一人となった人物で、この派出所のライダーギルド関連の業務を一手に担っている――だけ、だったはずでした。何故か〈陽気な幽霊亭〉の実質的な運営を任されており、増え続ける仕事に日夜頭を悩ませながらも、その全てをこなしています。
 奇妙なことに『前世』とでも呼ぶべき計200年分ほどの記憶を持っており、それに見合った高い技能を有しています。
 本人はそれらの情報が最初から組み込まれた状態でジェネレーターから生み出されたのだろう、と分析しています。
 極めてぶっきらぼうな人物ですが、騎獣にかける愛情は人一倍強いものです。騎手に対する態度が厳しすぎる、との苦情が来ることもあります。しかしそれは騎手・騎獣共に「出来る限り無事に」帰ってきて欲しい、それが叶わないならば、せめて本望を全うしてくれればという感情からくるものです。
 彼からの依頼は、ライダーギルドとリンデンファームに絡んだものが多くなるでしょう。】

“じゃじゃ馬使い”ジャック・ロシュフォール

“千本包丁”ベルガモット・コランダム

名前【“千本包丁”ベルガモット・コランダム/Bergamot Corundum】
種族【リルドラケン】性別【女】年齢【80】区分【③】
「特製シチューいっちょうあがり――!アツアツの内に食べてくんな。【ファイアプロテクター】は必要かい?(片目を瞑りながら)」
「へえ、こいつはあたしでも見たことのない食材だね。あんた、こいつは何処で取れるもので、どうやって食べるんだい?」
「あっはっは、ジャック、あんたまたメリーメリーにしてやられたね!」
解説
【〈陽気な幽霊〉亭の料理人頭です。多くの人からは愛称である「ベル」の名で呼ばれています。
 元はグロッソ港(※)の高級料亭で働いていましたが、いざこざに巻き込まれて店を飛び出し、カイミット漁港でふらふらしているところをメリーメリーに誘われて、〈陽気な幽霊亭〉で働き始めました。過去のことについてはあまり語ってくれません。
 たくさんの人に安くて安全で美味しい食べ物を振る舞うことをモットーにしており、彼女が〈陽気な幽霊亭〉で作る料理は、味こそ絶品ながら、高級料亭とは程遠いものです。しかしながら、時間を惜しまない場合には、そこで振る舞われていたような料理を作ってくれることもあるでしょう。煮込み料理なども得意ですが、彼女の真骨頂は魚を生のまま提供する料理にあります。その大柄な見た目からは想像もつかない繊細な包丁さばきが生み出す生魚料理は、芸術品そのものです。
 〈陽気な幽霊亭〉の面々には、レストランで使う料理の素材の調達や、幻の魚の捕獲依頼などをすることがあります。】

“千本包丁”ベルガモット・コランダム

“白銀の手綱”エルメス・デュクロ

名前【“白銀の手綱”エルメス・デュクロ/Hermes Ducrot】
種族【エルフ】性別【男】年齢【520】区分【③】
「まあ、昔からこの土地の騎獣の最たるものは魔動機だ。それだけはどう足掻いても変えられんよ。だがね、ドラゴンはカルキノスにならなくても良い。馬がバイクの真似事をする必要もない。そういうものだ。それだけはお前さん、忘れなさんな」
「昔はどうだったああだったって言ったって、何が変わるかね。新しい時代はその時代の者のもんだ。けど、私ら年寄りは、昔からのやり方が合うのさ。馬にだってそれぞれに合った走り方があるように、人それぞれ、色んな歩き方があるもんだよ」
解説
【リンデンファームのオーナーです。両親から受け継いだ牧場を〈大破局〉により失った後、キングスレイ鉄鋼共和国の復興を手伝いながら、リンデンファームを築き上げました。
 騎獣のみならず数多くの調教師と騎手を育て上げ、キングスフォールのライダーギルド支部に並々ならぬ影響力を持っている――と言われていますが、当人は政治的野心を全く持っていません。ライダーギルド支部との共同事業についても、「騎獣関連事業の振興になれば」という程度にしか考えていないようです。時に行き過ぎた振る舞いをする若手のギルド員や同業者に対して、苦言を呈することはありますが、過剰な干渉をすることもありません。
 本人も優れた調教師であり、一般に騎獣とされない類の幻獣や動物を騎獣として調教してきた実績があります。彼からの依頼はリンデンファームの騎獣に関するものが大半でしょう。】

“白銀の手綱”エルメス・デュクロ

〈陽気な幽霊亭〉 内部構造

+地下
 倉庫その他
+1階
 厨房、食堂、浴場(男女別)、受付、薬剤工房、購買、ライダーギルド支部派出所内事務所があります。
 メリーメリーが幽霊亭にいる時は、大抵、薬剤工房で調合をしています。
+2階
 会議室、学習塾、図書室その他があります。
+3~5階
 寮その他があります。
+屋上
 (何があるかは自由に決めてかまいません)

〈陽気な幽霊亭〉 内部構造

厩舎(派出所付属)

 〈陽気な幽霊亭〉からファイラーニ森林公園の中へ徒歩20分と、やや不便な場所にあります。
 基本的に冒険者の立ち入り可能な時間帯が朝9:00~15:00のみとなります。また、この厩舎は飽くまでも「一時的に休息を取る」ためのものなので、調教の為や、一週間を超える休息や療養であれば、1時間離れたリンデンファームに移送されるのが常です。

厩舎(派出所付属)

訓練場

 〈陽気な幽霊亭〉から徒歩1分の場所にあります。
 といっても、ファイラーニ森林公園の入り口付近の空き地を、簡単な柵で囲っただけの場所です。
 土地柄、公園で拳闘の訓練をする子どもたちが時々覗きに来ることもあるでしょう。

訓練場

画像出典

■メリーメリー・ウィロウ
画像:△○□×(みわしいば)様作成「少年少女好き?2」より
@miwasiba

■ベルガモット・コランダム
画像:謳華様作成「我得ドラゴンメーカー」より
@ouka595

■ジャック・ロシュフォール
画像:やすばる様作成「ストイックな男メーカー」より
@yasubaru0

■エルメス・デュクロ
画像:東雲れいぢ様作成「お兄さんも作れるおじさんメーカー」より
※Twitter不明

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